だいぶ薄れてきた・・・。
鏡に映った胸元。淡い印を指でなぞる。
これくらいなら、もう目立たないだろう。
ふっと息を吐く。
服で隠れる、ギリギリの。
こんなところに付けないでと怒ったのは、何日前の夜のことだったか。
私のものだっていう、印。
そう言って悪びれもせずに笑っていたあのひとに仕返しに付けた痕も、もう薄れているだろう。
ほんの数日で消えてしまう、儚い束縛。
少しだけ、寂しいと思ってしまう。
痕が消えたからといって、その想いまで消えてしまうわけでもないのに。
優しい声で甘く囁かれた言葉は、まだ耳の奥に残っている。
それでもやっぱり目に見える証が欲しいなんて、欲張りだろうか。
だけど、そんなことを言ってあなたを喜ばせるのも癪だから。
だから。
ずっと消えなければいいのに。なんて、思っていても言ってあげない。