とある休日の朝のこと。
眩しさを感じて、江利子さまは目を覚ましました。
・・・ここ、どこだっけ・・・?
とりあえず、ぼんやりとした頭で記憶を辿ります。
昨夜はたしか蓉子と飲んでいて・・・。
そう、ここは蓉子さまのお部屋。
江利子さまは蓉子さまのベッドに寝ているのです。
徐々に意識が覚醒し始めると、間近に寝息が聞こえているのに気づきました。
顔だけ横に向けると、そこには蓉子さまが。
当然といえば当然のことなのですが。
・・・なんで一緒に寝てるのよ・・・。
昨夜はだいぶ酔っていて、いつ寝たのかも記憶にないようです。
それにしても。
眠ってる蓉子って、幼いわね。
それはまさしく天使のような愛らしい寝顔。
めったに見られるものでもないので、ついじっと観察してしまいます。
目を閉じていてもやっぱり綺麗ね。とか、思ったより睫毛が長いのね。とか・・・。
するとふいに蓉子さまが身動ぎして、布団から僅かに白い肩がのぞきました。
って、肩!?
なだらかに覚醒していた意識が、一気に覚めます。
飛び起きそうになるのを、なんとか堪えた江利子さま。
なんで服着てないのよ!酔って自分で脱いだの・・・?
そして完全に戻った感覚で、自分も服を着ていないことにようやく気づきました。
かろうじて下着は身に着けているし、よく見ると蓉子さまも下着は着けているようです。
それにしても、どうしてこんな状況に至ったのでしょう。
ぜんっぜん思い出せないわ・・・。そもそも服はいつ脱いだのよ。
まさか・・・まさか、私が脱がしたの!?
自分でそう考えるのもどうかと思うけど、ありえないことではない。
・・・ような気がする江利子さま。
聖の顔をまともに見ることができないことになっていたら・・・。
そう考えると、それはそれで面白いかも。と思ってしまうところがコワイです。
「―んー・・・」
さてどうしたものかと考えていると、蓉子さまが目を覚ましました。
「おはよう」
とりあえずそう言うと。
応えようと微笑みかけた蓉子さまが眉を顰めます。
「おはよう・・・江利子、なんで服着てないの?」
「ひとのこと言えないと思うんだけど」
その言葉に一瞬怪訝な顔をした蓉子さまでしたが、もぞもぞと動いたかと思うと、
「え?・・・えっ、なんで!?どうして服脱いでるの!?」
普段の蓉子さまからは考えられない、面白いくらいの慌てっぷり。
わたわたと布団をたくし上げて、顔の半分まで隠してしまいました。
それでも顔が紅いのははっきり分かります。
なんなの、その犯罪的なまでの可愛さはっ。
紅い顔で上目遣いに見つめられて、さすがの江利子さまもくらくらしてしまいます。
思わず聖さまを羨ましく思ってしまったほどです。
「今更そんなに恥ずかしがらなくてもいいじゃない」
一緒に着替えたことだってあるんだし。と、そういう意味で江利子さまは言ったのですが。
蓉子さまは何を勘違いしたのか、
「今更って、どういう意味よ?」
そう訊いてますます顔を紅くしてしまったものだから、江利子さまの中でなにかのスイッチが入ってしまいました。
「あら。覚えてないの?大変だったのよ、昨夜の蓉子・・・」
意味深ににやりと笑います。確実に何かを企んでいる笑みです。
「え、江利子?」
そこでふと真顔になった江利子さま。
「今日は来るの?聖」
微妙に聖さまの名前を強調して訊くと、蓉子さまは声もなく頷きました。
「そう」
わざとらしく沈痛な面持ちでため息なんかついたりします。
「江利子・・・まさか・・・?」
その様子に、蓉子さまはすでに泣きそうです。
あぁ、そんな顔をしたら、ますます江利子さまが面白がるだけなのに・・・。
「大丈夫。悪いようにはしないから。蓉子はなにも心配しなくていいのよ?」
にっこり微笑む江利子さまですが、蓉子さまにとってはすでに悪い状態です。ええ、めちゃめちゃ心配ですとも。
「ちょっと、待ってよ。ねえ、江利子!せめて昨夜なにがあったかだけでも教えてっ!!」
そんなことを言われても、江利子さまだって覚えていないのですから教えようがないんですよ、蓉子さま・・・。
今日は楽しい休日になりそうだわ♪
必死になっている蓉子さまを可愛いと思いつつほくそえむ江利子さまは・・・まさに悪魔です。
「江利子〜」
哀れな子羊蓉子さま・・・健闘を祈ります・・・。
そして真相は闇の中(笑)