街中が赤や緑、金色銀色様々な色で賑やかに飾り付けられ、通りに面した店の中からはクリスマスソングが流れてくる季節。
新調したてのダークブラウンのコートとお気に入りのオフホワイトのマフラーに身を包んだ私は、足早に彼女の家へと向かっていた。
ついさっき通り過ぎた店先から流れていた定番のクリスマスソングを口ずさんだりして。
右手に提げたスーパーの袋からは、ネギが頭を覗かせている。

買い忘れはナシ、と。

念のため確認して、左手の荷物を抱えなおす。
これを見て彼女はどんな反応をするだろう。
きっと開口一番、こう言うんだろうけど。



「どうしたの?それ」

ほらね。
部屋へ入った私を見るなり、蓉子は言った。

「どうしたのって、買ってきたに決まってるじゃない」

スーパーの袋を渡してマフラーをとると、

「ありがとう。って、私それは頼んでないんだけど」

袋を受け取りながら少し困った顔をしている蓉子をよそに、部屋の奥へ。

やっぱり、ここかな。

窓の下に、買ってきたばかりの鉢植えを置く。
それは12月になると花屋の店頭に必ずと言っていいほど置いてある、ゴールドクレスト。
大きくはないけど、あまり物の多くない蓉子の部屋では存在感がある。

「なんとなく、クリスマスっぽいでしょ?」

側まで来た蓉子を振り返って見ると、彼女はなるほどといった感じで頷いて微笑んだ。

「じゃあ、飾るものを用意しなくちゃね」

膝をついて鉢植えを見ながらそう言う蓉子は、さっきの困った顔から一変してとても嬉しそうで。
隣にしゃがみ込んで、蓉子の手をきゅっと握った。

「プレゼントは蓉子がいいなー」

「…そんなこと訊いてませんっ」

一瞬呆気にとられてぷいっと背けた顔はやっぱり少し赤くなっていて、それがとても可愛い。



次の休みには、二人で買い物に行こう。
きらきら光る星にサンタクロース。真っ白な綿も買わないと。
そして一緒に飾り付けしよう。

「なににやけてるのよ」

「ん、楽しみだなーと思って」

クリスマスがこんなにも待ち遠しいなんてもう何年もなかったけど。
ケーキとシャンパンを買って、こっそりプレゼントも用意して。
二人で飾ったゴールドクレストのツリー。キャンドルを灯したらきっと素敵だろう。
想像するだけで楽しくなる。

「もう、聖は今年プレゼントなし」

「えーっ」

そんなことを言っても、蓉子がちゃんとプレゼントを用意してくれるって、わかってる。
準備いい彼女のことだから、もう用意してるかもしれない。
だけど私には。
イヴの夜を一緒に過ごして、日付けが変わったら一番に誕生日を祝ってくれる。
その笑顔が、なによりのプレゼント。

「次のお休みには、一緒に買い物に行きましょう」

それから飾り付けをして…そう言いながら飾る物の候補を挙げている蓉子。
楽しみね、なんて無邪気に笑うから。
私は、こみあげる愛しさのままにぎゅっと蓉子を抱きしめた。


クリスマスまで、あと少し…。